インタビュー

NPO法人 阿寒湖のマリモ保護会 会長
小林 道之Michiyuki Kobayasi

世界で最後に残された阿寒湖のマリモを守る。
地元住民が繋いできた長きにわたる環境保護

「球状マリモはすでに世界で唯一のものとなっています。阿寒湖のマリモを未来まで守っていかなければ…」。穏やかな表情ながら、「NPO法人 阿寒湖のマリモ保護会」3代目会長、小林道之さんの思いは揺るぎない。
阿寒湖のマリモを保護する同会の発祥は古く、1950(昭和25)年に地元住民らによって創設された「マリモ愛護会」が始まりだ。そしてその足跡は、阿寒湖のマリモがいく度となく直面してきた、危機と回避の歴史とともにある。1919(大正8)年から始まった発電事業は阿寒湖の水面低下や森林伐採を、そして1970年代から活発化した観光開発は湖水の汚濁を引き起こし、マリモの生育に影響を与えたのだった。
「そうした環境の変化を受け、阿寒湖のマリモは数も群生地も減らしてきました。しかしその都度、マリモを守ろうと調査研究を支え、阿寒湖の環境回復を先導してきたのは、マリモ保護会と地元の人々でした」。その長く地道な活動はあまり知られていないが、かけがえのない存在であった。

marimohogo_1.jpg 阿寒湖のマリモは、条件が良ければ10年かからず大きく生長することが確認されているが、いまだに「20㎝になるまで何百年もかかる」という古い決まり文句のガイド情報もある。小林さんはこうした誤りを是正しながら、新しい情報を発信していく姿勢だ。

marimohogo_3.jpg阿寒湖のマリモを育てる環境は、阿寒の地形や湖底の地形、適度な風。そして阿寒の原生林や火山が育むミネラル豊富な湧き水や川によっても保たれている。このうち何か一つでも欠けていたら阿寒湖に球体マリモは存在しなかったかもしれない。

 

いくつもの偶然が育てた奇跡の丸いマリモ

くしくも小林さんが同会会長に就任した2014年。阿寒湖とともに世界で2カ所だけ残されていた球状マリモの群生地、アイスランドのミーバトン湖からマリモが姿を消したという悲報がめぐった。とうとう球状マリモの群生地は、世界中で阿寒湖だけになってしまったのである。しかし小林さんが強く感じているのは重圧ではなく、阿寒湖畔で生まれ育った誇りとマリモへの親愛だ。
「釧路市教委マリモ専門学芸員(※)の研究によって、阿寒湖のマリモの生態が分かってくると、興味がさらに深まります。たとえばこれまで世界中の研究者を魅了してきた、まん丸の形。球状だと内部に光が届かず光合成はできないはずなのに、なぜ阿寒湖のマリモは丸く育つのか。それについての推測はこうです。マリモは1本1本の細い藻が、光に向かって枝分かれを繰り返しながら伸びていきますが、この時、絶妙な条件によりその場で回転し、球体全体に光を浴びていたのです。そしてその絶妙な条件とは、阿寒湖周辺の地形や湖底の地形、風の流れなどが作り出す奇跡でした」
阿寒湖のマリモの群生地、チュウルイ湾には6月、強い南風が吹き、この風が水面から湖底に向かって円を描くような水の流れを作るため、湖底のマリモはその場で回転できると考えられている。

marimohogo_4.jpgアイヌ語でトーラサンペ(湖の御霊)と呼ばれる阿寒湖のマリモ。発見されたのは1898(明治31)年で、国の特別天然記念物に指定されたのは1952(昭和27)年。また阿寒国立公園指定80周年も経て、阿寒湖の世界自然遺産登録を目指す機運も高まっている。

環境保護とともに啓蒙活動や情報発信も

小林さんが感じるマリモの魅力はそれだけではない。「チュウルイ湾では秋、周期的に風速10数mを超える強風が吹きますが、こうした荒天の後には20㎝級の大型マリモが岸へと大量に打ち上げられます。打ち上げられたマリモは波に砕かれてしまいますが、その破片は波に乗って元いた群生地へと戻り、再び光合成をして生長していました」。これも世代交代するための営み。生命の意志を感じると小林さんは感動する。
そのマリモ群生地、チュウルイ湾は国の特別保護区となっており、年3回行われる「マリモ生育地観察会」以外は一般者の立ち入りが規制されている。小林さんはこの方針を守り続けながら、その一方で阿寒湖のマリモに親しめる場ができることも期待していた。
「かつてマリモが絶滅した阿寒湖西側のシュリコマベツ湾を、再生させようという試みがあります。将来ここにマリモ群生地が復活したら、一般の人々も観察できる場所になって欲しい」。そう意欲を見せる小林さん。多くの人に阿寒湖とマリモを理解してもらい、親しみを持ってもらうことも保護活動の一環なのだ。世界の宝、丸いマリモはここから未来へ繋がれる。

marimohogo_5.jpg 「NPO法人阿寒湖のマリモ保護会」の理事数は十数名。主な活動は、「マリモ生育地観察会」の運営や、湖岸に打ち上げられ枯死の危険性があるマリモを沖合に戻す作業など。
年3回の「マリモ生育地観察会」のうち、2回は地元小中学生が対象だが、10月の「まりも祭」に併催される観察会は旅行者など一般者も参加可能。

1991(平成3)年に、阿寒町教委(現釧路市教委)に日本で初めてのマリモ専門学芸員(※)、若菜勇氏が着任してから、阿寒湖のマリモ研究が進み、科学的な知識が蓄積された。こうした研究者と連携することも「NPO法人阿寒湖のマリモ保護会」の重要な役割。

 

marimohogo_2.jpg

NPO法人 阿寒湖のマリモ保護会 会長
小林 道之 Michiyuki Kobayasi

2014年、「NPO法人阿寒湖のマリモ保護会」3代目会長に就任。民芸店店長や国設阿寒湖畔スキー場スタッフとして勤務し、「まりもの里商店街会長」も務める。観光事業と環境保護は相反する面もあるが、自らは中立な立場で阿寒湖のマリモ保全に取り組む。1981年、釧路市阿寒町阿寒湖温泉(旧阿寒町)生まれ。
http://marimo-web.org/

道東圏のアクティビティ情報はコチラ

インタビュー

サイトについて

釧路湿原、阿寒湖、摩周湖。
本サイトは雄大かつ希少な自然と生態系をもつ阿寒国立公園と、釧路湿原国立公園内にある3つのエリアへの旅をより楽しく、快適に満喫いただくためのポータルサイトです。
各エリアの魅力のご紹介や多彩なアクティビティのご予約、エリア間の移動支援システムなどを多言語でご用意しています。
この地ならではの美しい自然にふれる旅に、どうぞお役立てください。

水のカムイと出会える旅へ 釧路湿原・阿寒湖・摩周湖

このページの先頭へ戻る