釧路湿原の神・タンチョウ2 1924年、神は復活した

釧路湿原の神・タンチョウ2
1924年、神は復活した

突然、それは舞い降りた。自分の庭に帰ってきたかのように、すぐ近くで立ちつくす旅人を気にするでもなく、つがいの神さまがそこにいた。純白の羽ゆえか、気品に満ちた佇まいゆえか、そのまわりだけほんのりと明るく感じられた。ヨシやスゲの茂みから頭を出し翼を広げたり、ゆったりと落穂などをついばみながら、神さまはきっと釧路湿原の未来について語り合っているにちがいない。

タンチョウは現在国内では1300羽以上、そのうち釧路湿原に約1000羽が生息しているという。まさに千羽鶴というわけだが、そこには長い物語がある。かつて江戸時代から明治時代にかけては狩猟制限もなく、タンチョウは乱獲の末に絶滅したと思われていた。ところが1924年、狩猟者も立ち入れないようなキラコタン岬の近くで密やかに生息している彼らが奇跡的に発見されたのだった。“復活した神々”のニュースは大きな驚きと喜びをもって人間たちに伝えられ、やがて1952年、タンチョウおよびその繁殖地は国の特別天然記念物に指定された。さらに、阿寒町や鶴居村では、献身的にタンチョウを保護し給餌活動を行う有志の人たちも現れた。湿原の神と人間との交流がここに始まったのである。

こうして各地の給餌場には現在多くのタンチョウが集結するようになったのは慶賀に堪えないが、それで問題なしとしない。タンチョウの繁殖によって、畑の作物が荒らされたり給餌場が過密になっている点などが指摘されている。善意の活動が予定調和に進まないのは世の常である。ここは神頼みというわけにはいかず、経験と科学的知見に基づいた衆知の結集が必要だろう。

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